Ψυχή – Dawn 05
Act One: The Visitor
LEP: Life Elemental Particle
05『O.UNI-X 荒廃した惑星』 束の間の平穏と衝撃の事実
O.UNI-X は 目の前に展開した白の「門」へと、猛然と飛び込んでいく。光の奔流が船体を包み込み、彼らの視界は真っ白に染まる。
やがて、白く輝くゲートを抜けO.UNI-Xは新たな宙域へと躍り出た。光の奔流が収まると、メインスクリーンに映し出された宇宙空間は、先ほどの流星豪雨とはうってかわって、信じられないほど穏やかな静けさに満ちていた。
無数の星々が瞬き、漆黒の宇宙に静謐な光を投げかけている。
「……ま、まじ!?本当に助かった……よね?」
エフトが震える声で呟いた。彼女は握りしめた操縦桿からようやくの思いで手を離し、額に浮かんだ汗を拭う。
「本当だな、エフト。でもどういう理屈でこうなるんだ?」
ライトがいつもと変わらぬ口調でエフトに返すが、その声には微かに安堵の色が滲んでいた。 ブリッジの誰もが、張り詰めていた緊張の糸がぷつりと切れる音を聞いた。ラブ船長も全身から力が抜け、座席に深く沈み込んでいる。
「ラブちゃん!やったね!」
エフトが歓声を上げ、安堵の表情でラブを振り返る。 ラブは満足げに頷き、一息つくと、目標宙域である第三惑星の情報をマザーに要求した。
「マザー、現宙域における第三惑星のデータを表示。我々は第三惑星を目指す」
「了解しました。現宙域の第三惑星データを表示します」
マザーの音声が響き、メインのスクリーンにターゲットとなる惑星の姿が映し出される。それは、本来であれば生命の息吹に満ちているはずの、緑と水の惑星のはずだった。
しかし、映し出された惑星の姿に一同は息を呑む。
「なっ……」
エフトが言葉を失った。すぐ後ろに座るライトも、ごくりとつばを飲み込むような動きに驚きが隠せない。
多層空間として作成されたこちら側の第三惑星には、流星群などなかったはず。なのに、地表は荒れ果て、生まれたての惑星のように雑然と、荒涼とした姿を晒している。
大規模なクレーターが複数確認でき、大気も薄いとモニターに映る計測値は伝える。かつての豊かな水の痕跡はあっても、それらは既に干上がっているように見える。計測値にも海の痕跡があからさまに表示されている。
「……やっぱり、そうなのか」
そう呟いてワンが静かに頷いた。彼の瞳は、LEPとの対話によって得た情報を整理しているかのようだった。
「この第三惑星には、どういうわけか以前から流星群が何度も到達していたようですね。おそらく、私たちが出発時に渡されたデータは、流星群が到達する前のものか、あるいは何らかの理由でこの事実が隠蔽されていた可能性が高いです」
ワンの推測は、このミッションの事前調査を実施した機関への、深い不信感を伝えている。彼は、自分たちの目的地が、既に致命的な被害を受けていたことに憤りを感じ、怒っていた。
「ワン」
ラブが、モニターに表示される銀河時間を確認しながらワンに告げた。
「元の宙域に戻るぞ。これ以上こっちにいても仕方がない」
ワンは、船長席に設置されている詳細な観測装置から目を離し、深いため息をついた。
「……ええ、そうですね」
再び、ブリッジにマザーの音声が響く。
「白の門、展開いたします」
O.UNI-Xのメインスクリーンに、先ほどと同じく、白く輝く門が再び開いていく。一行は、束の間の安堵と、第三惑星の衝撃的な現状を胸に、元あった宇宙へと戻るため再びその白い光へと身を投じていった。
Ψυχή-黎明