Ψυχή-黎明 07
第一幕:来訪者
LEP ライフ・エレメンタル・パーティクル
07『O.UNI-X 目的地変更』 不可逆の選択と新たな旅路
メインスクリーンに映し出される第三惑星の荒廃した姿を前に、O.UNI-Xのブリッジには重い沈黙が垂れ込めていた。その沈黙を破ったのは、ワンの静かな声だった。
「……マザーと協議した結果、一つの結論に至りました」
ワンはそう切り出すと、皆の視線を集めた。
「今回のLEP運搬ミッションの目的地を、第三惑星から、第四惑星へと変更します」
その言葉に、エフトとライトは顔を見合わせた。
「は?第四惑星って……ほとんど情報がない星系じゃん!まさか、ゼロから調査しろってこと!?何万年かかるのよ!?」
エフトが声を上げた。ライトも眉をひそめている。
彼らは、事前の入念な調査と準備の上に成り立っている任務の性質をよく理解していた。情報が乏しい場所への変更は、それだけリスクが高いことを意味する。
しかし、ワンは冷静に続けた。
「現地でのLEP投下作業、およびその後の生態系監察は、主に僕が一人で実施します。皆さんは、船の運航と現地での安全確保に集中していただければ問題ありません」
その言葉に、エフトとライトは拍子抜けしたような表情になった。
「あー、そっか。ワンちゃんが全部やるってことなのね。なら、まあ、いっか」
エフトが安堵したように、しかしやや無責任な調子で言った。
「……そうだな。我々の負担が増えるわけではない」
ライトも、それ以上反論することはなかった。彼らにとって、ミッションの成功は重要だが、それ以上に自身の業務の量が増さないことが優先されるようだ。
ラブ船長は、二人の反応を横目に、黙って事態を受け入れていた。彼女の顔には、明確な不機嫌の色が浮かんでいる。今回の旅が最後の任務であったこと、そして目的地が突如変更されるという異常事態に、彼女の中で複雑な感情が渦巻いているのが見て取れた。その表情は、少しばかり怖く見えるほどだった。
その間も、新人のシオルは、ブリッジの隅でブツブツと文句を言っていた。
「ちょっと!まさか本当に多層空間作っちゃったの!?あとの管理とかどうするのよ……。私は関われないんだからね、この責任は誰が取るのよ!」
彼女の意識は、未だ「空間の多層化」という、宇宙の法則を捻じ曲げた行為に向けられており、目の前で下された「目的地変更」という重大な決定には、ほとんど関心を払っていないようだ。
彼女にとって、今最も重要な問題は、自身のキャリアと、秩序が乱されることへの懸念だった。
Ψυχή-黎明