Ψυχή-黎明 04
第一幕:来訪者
LEP ライフ・エレメンタル・パーティクル
04『O.UNI-X 未知への飛翔』 多層空間とシオルの心労
「多層空間って、この宙域に平行宙域作っちゃうってことよね!?そんなの駄目駄目!!あとの管理とか、私達誰も関われないのよ!!」
シオルは必死に異議を唱えた。その声は、ブリッジに響き渡る警報音と、マザーのシステム音声にかき消されがちだったが、彼女は諦めなかった。
しかし、ラブ船長も、エフトも、ライトも、その言葉に耳を傾けることなく、行動に移していく。
いよいよ彼らの目の前には、白く輝く、未曾有の文字通り「門」が開きつつあった。
ラブはメインスクリーンを見据え、いつの間にか隣に立つワンに問いかけた。
「ワン、大丈夫なんだろうな? 本当に、この多層空間は安全なんだな?」
ワンは、空間の奥を見つめるように視線を固定し、微かに頷いた。
「……はい、大丈夫です。彼らが、安心しています。なので向こうの空間に問題はないはずです」
彼の言葉は、まるで他の誰かと会話しているようでもあった。シオルは、その不可解なやり取りに何とか割り込もうと口を開きかけたが、ラブとワンの視線は、既に目の前の「白の門」に向いており、彼女の視線に気づく気配すらない。
「エフト!目の前に開いていくあれ!あそこに飛び込んで!」
ラブの指示が、ブリッジに轟いた。
O.UNI-Xのメインスクリーンいっぱいに、白く輝く巨大な「門」の光が、網膜に焼き付くような鮮やかさで開いていく。それは、宇宙の深淵にぽっかりと開いた未知への誘いでもある。
「アイアイシー!船長、任せて!こんなの、もう最高じゃん!」
エフトはつい先ほどまで半泣きだった顔から一転、歓喜の表情を浮かべ、興奮気味に操縦桿を掴んだ。彼女にとって、この尋常ならざる事態は、まさにスリル満点のゲームのようだった。乱暴だった操縦は、再び大胆不敵な動きへと変わっていく。
その傍らで、ワンは誰にともなく、柔らかな声で話していた。
「ですよね、あはは。ああ、確かにそういった点で僕らもまだまだ学ぶところはあるかなと……」
彼の言葉は、目の前の絶体絶命の状況とは裏腹に、どこか牧歌的な響きを帯びていた。
Ψυχή-黎明