Ψυχή-黎明

Ψυχή-黎明 03

第一幕:来訪者

LEP ライフ・エレメンタル・パーティクル

03『O.UNI-X 緊急脱出』 緊急申請と奇跡

ラブ船長の声に、ワンはゆっくりと振り向いた。彼の表情は相変わらず穏やかだが、その瞳の奥には、目まぐるしい情報処理の光が宿っているように見える。ラブにはそう見えた。

「以前のトラブルで実行した『空間の多層化とホワイト・ゲート使用』。あれ、今回も可能か?」

ラブの問いかけに、ワンは宙に視線を向け、誰かと対話するように頷いた。

「……ええ、技術的には可能です。ただ……倫理的な問題が、いくつか発生する可能性がありますね」

倫理的な問題。その言葉に、シオルが敏感に反応した。

「倫理的な問題って!私、次にまた問題起こしたら今の機関から出て行かなきゃならないんですけど!?」

シオルは半ばヒステリックに叫んだ。彼女にとって、この状況はキャリアの危機そのものだった。

ワンは、焦るシオルを一瞥することなく、再び視線を宙に向けたまま、ラブに指示を出す。

「この船とマザーの能力的には、実現は問題ないはずです。なんか、こっち側のあれこれが問題あるかもという話なので、船長権限でマザーを通して申請を先にお願いします」

「この、状況で!申請って、すぐとおんの!?」

エフトが叫んだ。船体はまだ激しく揺れている。この非常事態で、形式的な申請など作成している暇なんてない!と誰もが思った。

「最悪だ」

エフトの言葉に、ライトが吐き捨てるように言った。

「よし!」

しかし、ラブは躊躇しなかった。彼女は操船士たちの叫びを意に介さず、ブリッジの天井を仰ぎ、叫ぶようにマザーに伝えていく。

「マザー!申請!第三次運搬航行あるいは第四次運搬航行にて特殊申請を行った事項!空間の多層化とホワイト・ゲート使用許可!緊急、即時希望!」

ブリッジに、マザーの無機質な声が響いた。

「申請受理。……ライフエレメントパーティクル研究機関およびセントラル中央管理局宙域管理課宛に申請完了」

「はあ!?そんなんすぐ許可降りるわけないじゃーん!」

エフトが呆れたように声を上げた。

「そうだな!」

ライトも珍しくエフトに賛同し、呆れの色を露わにする。 誰もがそう思った。

その時だった。

「LEP研究機関より承認確認。続いてセントラル中央管理局宙域管理課より承認確認。今より多層空間の作成を開始します。……完了。白の門、展開します」

マザーの声に、ブリッジの空気が凍り付いた。

「なっ……!」

エフトとライトは目を剥き、シオルは口をあんぐりと開ける。ラブは、モニターに映し出される空間の変化を凝視しながら、微かに呟いた。

「思ったよりもいい反応ね……」

白く輝く光が、O.UNI-Xのメインスクリーンに、まるで膜を破るように展開していく。それは、宇宙空間にもう一つの空間が重なり合うように生成されている証だった。 ラブは再びワンに視線を向け、念を押すように確認した。

「新しく作った多層空間には、『動くもの』つまり隕石群はコピーされない、ということで認識に間違いないな?」

「ラブちゃん、今それ確認?!あれ一緒なら意味ないじゃん!半泣から本泣きだよ!」

エフトが不安げに叫び、ライトもそれに「賛同」と応じる。

「ちょ、ちょちちょっちまって!」

シオルが、その会話の意味をようやく察し、悲鳴のような声を上げた。

「多層空間って、この宙域に平行宙域作っちゃうってこと!?そんなの駄目でしょ!あとの管理とか私関われないわよ!?」

彼女は自身のキャリアへの影響だけでなく、この宇宙の法則を捻じ曲げるような行為そのものに、強い異議を唱えた。しかし、その声は、既に目の前で展開されつつある白く輝く門の前に、かき消されていく……

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