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あの日、あの場所で

リトライのない分岐

夏休みに入り俺は、母の知人の紹介でアルバイトならぬお手伝いを始めた。まだ年齢的に働ける歳にはなっていないと言われたが、母の知人は「だったら私のお手伝いってことでいいじゃない」と強引に押し切り、家や学校から離れた場所にある、手打ち蕎麦のお店で皿洗い。

なんでそんなことになったのかというと、休みに入る少し前に、いつもの夕飯で妹ちゃんが「かわいい水着が欲しい」と言い始めて、それをあいつは「我慢しなさい!無理言わないの」と切り捨てたことが発端。

弟の方が大人だった件

発端はそんなだったが、その場で弟が「だったら僕に任せて」と大見得を切り、とことこと子供部屋に行って持ってきたピンクの豚の貯金箱。

おもむろに頭の上まで持ち上げて、振り下ろそうとした瞬間にあいつが止めた。ものすごい怖い顔で弟の振り上げた手を掴み、そうして言った言葉がものすごい。

「あんた、うちの妹をダメな女にするつもり?」

弟の後ろで見ていた俺は、あいつの凄んだ顔と声に、すっかり気を抜かれて引いていた。すると弟は、ハッキリと答えた。

「女の子がかわいい服を欲しがるのは普通でしょ。だったらそれを叶えるのは、男の子の役だってお父さんが言ってた」

そう言って怯みもせず、まっすぐにあいつの目を睨み返していた。

弟と妹ちゃんの関係

あまり興味を持たなかったからよく知らなかったんだけど、どうやらうちの弟と、あいつんちの妹ちゃんは、ずいぶんと仲が良いらしい。

どれくらい仲が良いのかと聞いたら、妹ちゃんが笑顔で「こいびとどうし!」と答えていた。

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