『星の王子様』とバラの物語：心が見つける、かけがえのない価値

「大切なものは、目に見えないんだよ。」

これは、アントワーヌ・ド・サン＝テグジュペリの名作『星の王子様』に登場するキツネが、王子様に語る重要な言葉です。私たちの「No Life」は、この言葉が指し示す真理、つまり心で見ることの重要性を深く探求する場所です。

今回は、『星の王子様』と一輪のわがままなバラの、愛と葛藤の物語を紐解きながら、目に見える表面的な価値に囚われがちな私たち大人が忘れかけている、「真に見えるもの」、そして何が私たちにとってかけがえのないものなのかを考えていきましょう。ラテン語で「Cor Videt.」、つまり「心が見る」という言葉を胸に、王子様の旅を追体験します。

王子様の小さな星に咲いていた一輪のバラは、美しく、そして少しばかりわがままでした。王子様はその世話を焼き、水をやり、風よけを作り、彼女のあらゆる要求に応えます。しかし、バラの言葉や態度に傷つき、王子様は星を離れる決意をするのです。

この時点での王子様にとって、バラはただ多くの星にある美しい花の一つに過ぎなかったかもしれません。目に見える美しさ、そして少しばかりの扱いにくさが、彼のバラに対する認識の全てだったのでしょう。

さまざまな星を巡る旅の中で、王子様は地球に降り立ち、たくさんのバラが咲いている庭園を目にします。彼はそこで初めて、「自分の星のバラも、その一つに過ぎなかったのか」と悟り、悲しみに暮れます。

しかし、キツネとの出会いを通じて、王子様は大切なことを教わります。「君がバラのために費やした時間、それが君のバラをかけがえのないものにしたんだ。」と。目に見える数や形ではなく、心を通わせ、時間と愛情を注いだことこそが、その存在を唯一無二のものにするのだと。

キツネはさらに言います。「君は、君が飼いならしたものの責任があるんだ。」王子様がバラのために行った世話、それは単なる義務ではなく、二人の間に深い絆を育んでいたのです。その絆こそが、無数に咲くバラの中で、彼のバラを特別な存在にしていたのです。

これは、私たちの人生においても同じです。目に見える肩書きや富、外見の魅力だけではなく、私たちがどれだけの時間と心を注ぎ、深い繋がりを築いたか。そこにこそ、「かけがえのない価値」は宿るのではないでしょうか。家族、友人、パートナー、そして情熱を注ぐ何か。心で繋がったものこそが、私たちにとって本当に大切なものなのです。

『星の王子様』の中で「飼いならす」という言葉は、キツネが王子様に教える非常に重要な概念で、「関係を築くこと」「絆を結ぶこと」 を意味します。

キツネが王子様に言った有名な言葉は、「君が僕を飼いならせば、僕たちは互いに必要になる。君は僕にとって世界でたった一人の存在になり、僕も君にとって世界でたった一人の存在になる」というものです。

王子様とバラの関係は、まさにこの「飼いならす（絆を結ぶ）」ことの逆のプロセスから始まりました。バラは、王子様が自分に愛情と手間をかけたことによって、王子様にとってかけがえのない存在になったのです。

バラはわがままで、王子様が一方的に世話を焼いているように見えましたが、その世話を通じて、王子様の心の中でバラは唯一無二の存在となりました。つまり、王子様がバラを「飼いならした」のではなく、王子様がバラに対して注いだ時間と愛情が、バラを王子様にとっての「かけがえのない存在」にした、と解釈するのがより適切です。

そして、王子様が地球でたくさんのバラを見た時に、自分のバラが特別だと気づいたのは、キツネが教えた「君がバラのために費やした時間こそが、君のバラをかけがえのないものにしたんだ」という言葉の真理を理解したからです。この言葉は、まさに絆の価値を教えています。

『星の王子様』とバラの物語は、私たちに「Cor Videt.（心が見る）」という真理を教えてくれます。表面的な美しさや、時にわがままに見える言動に惑わされることなく、その奥にある本質、そしてそこに注いだ時間と愛情こそが、何よりも大切であることを。

今一度、私たち自身の周りを見渡してみましょう。目に見える情報や評価に囚われることなく、心で感じるものは何でしょうか？あなたが大切に想い、時間をかけて育んできたものは何でしょうか？

『星の王子様』がバラを通して学んだように、私たちもまた、日々の関わりの中で、心で「見る」ことを意識することで、本当に「大切なもの」を見つけることができるはずです。その気づきこそが、「No Life」が目指す、豊かな人生への第一歩となるでしょう。