Lovable Life Recommendations

あの日、あの場所で

見慣れない服

色々あって中学校にあがった。ランドセルは背負わなくて済むようになり、けれど真っ黒な制服を毎日着ていかなきゃいけなくなった。

周りを囲う山々が更に狭くなったような気がした。

そうして僕は、自分のことを俺と言うようになり、君は見慣れない制服で以前よりも大人びて見えた。

「何見てんのよ。透けブラばっか見て、変態」

……中身は、小学校の時とほぼ変わっていなかった。ちなみに胸元に目がいっていたのは、パットが何枚入っているんだろうかと疑ったからだ。もちろん俺はそんな言い訳じみたことは言わない。

窓際の一番後ろの席

中学はどうやらクラス替えはないらしい。一度決まれば、そのまま卒業まで一緒なんだそうだ。もはや腐れ縁と化した幼馴染は、つまりこの先三年間を同じ教室で過ごすことが確定していた。

そうして俺の席は窓際の一番後ろの席で、君の席は教室のど真ん中。

窓から入り込む風に、桜の匂いが入り混じっていた。

初夏の災難

中学に入学して気が付けばもう6月。あっという間に二か月が過ぎ、あと同じだけ過ごせば夏休みがやってくる。

「みんないいな。夏休み、家族で海に行くんだって」

相変わらず夕方の食事は一緒。そんな中、君が言い出した。

「ねえ、あんたからお願いしてくんない?夏休み海に行こうって」

何をどうしたらそういうことになるのかわからなかったので、弟に振った。

「うえー、僕が言うのぉ?」

「ひえー、自分で言わないで弟にさせるの?」

「はえー?!」

俺以外の三人で大合奏になる。なんでだ?

真夏の計画

「あんたからなら、たぶんあんたんちのお父さんも、うちの父ちゃんもいいよって言うから。ね、お願い。水着姿拝ませてあげるから!」

俺、発育不良の幼馴染の水着姿見て喜ぶような男じゃない。たぶんどうせ、妹ちゃんの水着姿だろ。

「断る」

ぶーぶー大合唱を始める三匹の子豚を前に、なんでこんな奴らを相手にしなきゃいけないんだと、もし自分が狼だったらなんて答えを返せばいいかと少し考えた。

「煉瓦で家作って中に籠ってろ!」

……捻りすぎてキョトンとされた。

思わぬ奇跡

そんな話があってからひと月ほどして、ある日珍しく夕飯に間に合ったうちの母親が、俺たち四人にこう言った。

「あんたたち、8月の最初か最後に海につれてってあげるけど、どっちがいい?」

その一言に目をまん丸くして驚いていたのが、うちの弟。小学4年生。

そして手放しで大喜びしていた、君んちの妹。小学3年生だったっけか?

ニコッと笑顔でうちの母親に「ありがとう!」って元気に言って、すぐ振り向いて俺に向かって蔑んだ目を向けたのが君。

あとで理由を聞いたら、俺が何もしなかったことに対する侮辱だったと吐いた。それが誤解だとわかるまで放置しておいた分、ダメージは大きそうだったけど、あの具合だと二日もすれば元通りになるだろうと予測はついた。

一か月間、家事手伝いを増やして、買い出しだけじゃなく夕飯つくって食わせてたの俺だぞ?母さんがようやく話を聞いてくれる程度に時間に余裕が持てて、そこで相談したの俺だぞ?ついで言えば君んちの火薬庫みたいな父ちゃんを説得しに行ったのも俺だぞ?庭仕事の手伝いを何回させられたと思ってんだ?

ページ: 1 2 3


投稿日

カテゴリー:

投稿者:

タグ:

コメント

コメントを残すコメントをキャンセル

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

モバイルバージョンを終了